社員が退職すると、その人のメールボックスは扱いの難しい資産になります。会社に必要なやり取り、誰も把握していないサービスの認証情報、そして顧客が今後何か月も使い続けるメールアドレスが残るからです。退職者のメールボックスをどうするかは、最終出勤日の午後になって慌てて決められがちです。その結果、重要な履歴が失われます。
この記事では、選べる対応、それぞれに伴うコスト、メールを失わずアクセスも確実に閉じるための手順を説明します。
この順番で対応する
退職者のメールボックスは、決まった手順で処理する必要があります。順番を間違えると隙が生まれるため、個々の作業よりも実施する順序が重要です。
最初に、新たなアクセスを止めます。パスワードを変更し、アプリパスワードをすべて無効にして、接続済み端末のアクセス権も取り消します。退職予告期間の満了日ではなく、実際に雇用関係が終わる時点で行ってください。この2つは別の日になることも多く、その間に問題が起きます。
次に、新着メールの受取先を決めます。ほかの操作を始める前に、翌朝からそのアドレス宛てのメールを誰が受け取るのか決めておきます。担当者が退職しても、顧客からの連絡は止まりません。
3番目に、既存の内容を保全します。メールボックスの内容は会社の業務記録であり、その社員の在籍期間より長く必要になるものです。
その後で初めて、メールボックスを削除するか用途を変更します。削除は最後の手順であり、元には戻せません。ほかの対応がすべて完了してから実施してください。
選べる対応とそれぞれのコスト
退職者のメールボックスには、4つの現実的な扱い方があります。どれが適切かは、そのアドレスが社外でも使われていたかどうかで決まります。
共有メールボックスに変更する。アドレスはそのまま使えます。同僚はパスワードを共有するのではなく、メンバーとしてアクセスでき、過去のメールもすべて元の場所に残ります。顧客対応をしていた社員には、通常これが最適です。契約プランでドメインごとに利用できる共有メールボックス枠を1つ使用します。
転送を設定した休止メールボックスとして残す。新着メールを引き続き受信し、業務を引き継いだ人に転送します。簡単な方法ですが、返信元が別のアドレスになるため、相手を混乱させることがあります。
エイリアスに変更する。本当に新しい用件のメールが届かなくなった段階で、別の社員のメールボックスにエイリアスとして追加します。ほとんどコストをかけずにアドレスを維持しながら、メールボックス枠を完全に空けられます。
削除する。社外の人が誰も知らない社内専用アドレスや、在籍期間が短く外部と一度も連絡を取らなかった社員のアドレスなら、削除しても問題ありません。顧客に知られているアドレスには不向きです。保存期間を過ぎれば、実質的に元へ戻せません。
過去のメールを残す
退職時に見落とされやすいのが、メールボックスの内容を保全する作業です。そして、約1年半後に問題が持ち上がったとき、最も後悔しやすい部分でもあります。
最も安価な方法は、メールボックスを削除せずに残すことです。TrekMailのストレージはユーザー単位ではなく全体で共有されます。そのため、休止中のメールボックスは容量を使いますが、追加料金は発生しません。1年間残しても、メールボックス枠を1つ使う以外のコストはありません。メールボックスごとの課金ではないので、料金を抑えるために削除を急ぐ必要もありません。
別の場所に保存したい場合は、IMAP経由でエクスポートすると自社で管理できるコピーが作られ、そのまま保管場所へ移せます。メールボックスが大きく、共有ストレージをいつまでも消費させたくない場合にも適した方法です。
避けたいのは、すべてを別の社員の受信箱へ転送してから、元のメールボックスを削除する中途半端な方法です。履歴が1人のメールボックスの中に入り込み、今まさに解決しようとしている問題を次の担当者へ先送りするだけです。
見落とされがちな認証情報
退職者のメールボックスは、そのアドレスで過去に登録したすべてのサービスにとって、本人確認の手段でもあります。
そのアドレスをログインIDにしているサービスや、パスワードの再設定先にしているサービスは、次にメールボックスを管理する人がアクセスできる状態になります。だからこそ、削除するより会社の管理下に残すべきです。自社ドメインの削除済みアドレスは、ドメインを操作できる人なら誰でも作り直せます。将来、本来アクセスさせるつもりのなかった人が再作成する可能性もあります。
対応を決める前に、そのアドレスが何に使われていたか確認しましょう。登録確認やパスワード再設定のメールを検索してください。10分ほどの確認で、誰も存在を知らなかったサービスが2つ、3つ見つかることは珍しくありません。
サービスごとにエイリアスを使い分けていれば、この作業はずっと簡単です。アドレスを見るだけで、どのサービス用なのか分かるからです。詳しくは、登録先ごとにメールエイリアスを使う方法で説明しています。
標準の退職手続きにする
退職者のメールボックス処理がうまくいかない原因は、知識不足ではありません。退職のたびに、時間に追われながら、その場にいる人が対応を決めていることが原因です。
一度だけルールを文書にしてください。どのアドレスを共有メールボックスに変更するのか、どれをエイリアスにするのか、休止メールボックスをどれだけ残すのか、各手順を誰が担当するのかを定めます。1ページの規程があれば、その場しのぎの対応をなくせます。メールが失われるのは、その場しのぎで処理したときです。
根本的な対策は、退職の影響を受けにくい構成にすることです。やり取りが個人ではなく、プロジェクト、顧客、役割に属していれば、退職者が出てもメンバーを変更するだけで済み、メールボックスの扱いを改めて決める必要はありません。この方法は、プロジェクトごとにメールボックスを用意する方法で紹介しています。個人用アドレスが完全になくなることはありませんが、対応が必要な範囲を本当に個人に属するものだけに絞れます。
法律面について簡潔に
知っておきたい点が2つあります。ただし、ここで述べる内容は法律上の助言ではありません。
業務用メールボックス内の仕事上のやり取りは、一般に雇用主が保有する記録です。保存義務は国や地域、業種によって異なり、多くの場合は数年間、金融関連や規制対象の資料ではさらに長くなることもあります。英国では、ICOのガイダンスが確認の出発点になります。そのため、すぐにメールボックスを削除すると、利便性とは別の理由で問題になる可能性があります。
業務用メールボックス内の私的なメールは、さらに慎重な扱いが必要です。具体的な扱いも国や地域によって異なります。円満ではない退職の最中に決めるのではなく、退職時にメールボックスをどう扱うのかを事前に示し、誰にとっても予想外の対応にならないようにするのが適切です。