多くのクラウドストレージには、各パソコンへファイルをダウンロードする同期クライアントがあります。クラウドの使用量が15 GBで、ノートパソコンにテラバイト級のディスクがあれば便利です。しかし、2 TBのアーカイブは256 GBのSSDには収まりません。選択型の同期でダウンロード対象は絞れますが、ディスク容量そのものは増えません。
WebDAVなら別の使い方ができます。OSがすでに対応している場合も多く、すべてをダウンロードする代わりに、リモートストレージをネットワーク上の場所として接続します。Finderではサイドバーに表示され、Windowsではドライブ文字を割り当てられます。ファイルはサーバーに残り、クライアントが必要なデータを取得します。ただし、ローカルにキャッシュを保存することはあります。
この記事では、WebDAVに向いている用途と制約、macOS、Windows、Linux、Android、iOS、コマンドラインからの接続方法を説明します。接続にはデバイス用パスワードを使います。必要になれば、アカウントのメインパスワードを変更せずに失効させられます。
WebDAVとは
WebDAVはHTTPを拡張し、コレクションの作成、コピー、移動、ロック、プロパティの読み書きなど、ファイル管理に必要な操作を追加したプロトコルです。改訂された仕様は2007年にRFC 4918として公開されました。広く対応されているオープンな規格で、安全な接続にはポート443のHTTPSを使います。
多くのパソコンでは追加のクライアントをインストールする必要がありません。macOS、Windows、各種Linuxデスクトップ環境のファイルマネージャーがWebDAVに対応しています。AndroidとiOSでは対応アプリを利用できますが、必要な機能や料金は確認してください。rclone、バックアップソフト、継続的インテグレーションのスクリプトなども、提供元専用のSDKなしで接続できます。
ドライブのマウントは、全ファイルのコピーとは違います。フォルダーを開くと一覧をサーバーに要求し、ファイルを開くと必要なデータをダウンロードします。保存すると変更内容をサーバーへ送ります。2 TBのアーカイブ全体をパソコンに置く必要はありませんが、取得したファイルやキャッシュはローカル容量を使います。
同期とネットワークドライブの違い
それぞれ用途が異なり、併用もできます。日常の作業ファイルは同期し、アーカイブはネットワークドライブから参照する、といった使い分けです。
| 同期クライアント | マウントしたWebDAVドライブ | |
|---|---|---|
| ローカル容量 | 同期のためにダウンロードしたファイルのサイズ | 取得したファイルとクライアントのキャッシュ |
| オフライン利用 | ローカルに保存済みのファイルは利用可能 | 通常は保証されない。クライアントと取得済みのファイルによる |
| ファイルを開くとき | すでにローカルにあれば速い | 必要に応じてダウンロード。低速回線では大きなファイルに時間がかかる |
| 競合 | 競合したコピーを作ることがある | 同時編集による競合や上書きは起こり得る |
| 必要なソフト | 各パソコンの同期クライアント | OS内蔵のクライアント、または対応アプリ |
| 向いている用途 | 毎日編集するファイル | 常に全体をローカル保存する必要のないアーカイブ、メディア、バックアップ |
競合については補足が必要です。複数のパソコンがそれぞれのローカルコピーを編集すると、同期クライアントはreport (John's conflicted copy 2026-06-14).xlsxのようなファイルを作ることがあります。WebDAVでは各端末に完全な同期コピーを維持する必要はありません。しかし、安全な同時編集が保証されるわけではなく、クライアント、ロック機能、保存方法に左右されます。
アカウント用ではなくデバイス用パスワードを使う
管理画面のパスワードは、請求、ドメイン、メールボックス、アカウント設定へのアクセスに使います。バックアップスクリプト、後で売却するかもしれないスマートフォン、紛失するおそれのあるノートパソコンに同じパスワードを使うのは避けましょう。
Driveでは接続ごとに別の認証情報を使います。デバイス用パスワードは同期デバイスページで作成し、表示されるのは一度だけです。保存されるのはハッシュ値で、次のような利点があります。
- 個別に失効できる。ノートパソコン用のパスワードを失効させても、ほかのデバイスを切断したり再設定したりする必要はありません。
- 権限を限定できる。パスワードには作成時に選んだ権限が付きます。読み取り専用ならアーカイブを閲覧できますが、変更や削除はできません。バックアップスクリプトにはDriveへの書き込み権限を付け、請求、ドメイン、メールへのアクセスは与えない設定ができます。
- 元のパスワードは再表示できない。保存するのはハッシュ値だけです。パスワードを紛失したら新しく作成してください。私たちのチームも古いパスワードを読み出すことはできません。
フィールド名が違っても、必要な情報はどのクライアントも同じです。同期デバイスページにあるサーバーURL、ユーザー名として使うアカウントのメールアドレス、dsync_で始まるデバイス用パスワードを入力します。詳しくは同期デバイスを参照してください。
各プラットフォームから接続する
macOSのFinder
移動 → サーバへ接続(Command + K)を開き、サーバーURLを貼り付けて登録ユーザを選びます。アカウントのメールアドレスとデバイス用パスワードを入力すると、Finderのサイドバーに表示されます。キーチェーンに認証情報を保存すると再接続が簡単になりますが、ログイン時の自動マウントには追加設定が必要な場合があります。手順:macOSのFinder。
Windowsのエクスプローラー
PC → ネットワークドライブの割り当てを右クリックメニューなどから開き、ドライブ文字を選んでURLを入力します。別の資格情報を使用して接続するにチェックを入れ、同じメールアドレスとデバイス用パスワードを入力してください。ローカルディスクと並んで表示されます。大きなファイルを転送する前に、下の50 MB制限を確認してください。手順:Windowsのエクスプローラー。
Linux
GNOMEのファイルとKDE Dolphinは、アドレス欄にdavs://のURLを入力すると認証情報を求めます。アプリケーションから使えるマウントポイントが必要なら、davfs2を利用できます。rclone mountも選択肢で、キャッシュや転送方法を調整できます。性能は設定と接続環境によって変わります。
rclone:各種OSに対応し、スクリプトでも使える
rcloneはバックアップ、定期同期、複数テラバイトの転送など、手動操作なしで実行する処理に向いています。WebDAVのリモートを設定し、提供元にはotherを選びます。目的に応じてrclone sync、rclone copy、rclone mountを使ってください。rcloneのWebDAVバックエンドは並列転送と失敗時の再試行に対応します。容量制限や転送の再開可否は、サーバーと実行する処理にも依存します。設定:rclone。
Cyberduck:macOSとWindows
このGUIクライアントは、大きなファイルを転送するときにOSのファイルマネージャーより使いやすい場合があります。CyberduckではURLをサーバーとパスの欄に分けて入力します。必ずWebDAV (HTTP/SSL)を選び、暗号化されないHTTPの設定は使わないでください。設定:Cyberduck。
Android
DAVx⁵を使った対応構成では、AndroidのStorage Access Frameworkを通じてストレージを組み込めます。DriveがFiles by Google、Solid Explorer、Total Commanderなど、標準のファイル選択画面を使うアプリに表示される場合があります。必要な構成要素と利用バージョンの対応状況を確認してください。設定:DAVx⁵。
iOSとiPadOS
ReaddleのDocumentsではWebDAV接続を追加できます。バージョンと有効にした連携機能によっては、ファイルアプリやシステムの書類選択画面を使うアプリからも接続先を利用できます。設定:iOSのDocuments。
Windowsの50 MB制限
Windows内蔵のWebDAVクライアントは、約50 MBを超えるファイルを拒否し、一般的なネットワークエラーを表示することがあります。サーバー側が大きなファイルを許可していても、WebClientサービスの既定の制限が原因で失敗する場合があります。
レジストリ値はFileSizeLimitInBytesで、場所は次のとおりです。
HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\WebClient\Parameters
レジストリをバックアップし、管理者権限で十進数の値を4294967295に設定できます。約4 GBに相当し、この項目で設定できる最大値です。その後、WebClientサービスまたはパソコンを再起動します。4 GBを超えるファイルにはrcloneかCyberduckを使ってください。このWebClient制限の影響は受けませんが、別の制限が適用される可能性はあります。
Windows内蔵のクライアントは、大量転送にはあまり向いていません。文書を開いたりフォルダーを確認したりする用途には使えます。大量のデータを頻繁に移動するならrcloneを検討し、割り当てたドライブは日常の閲覧に使うとよいでしょう。
大きなファイルを転送する
アップロードできる内容は、プランの容量、クライアント、サーバー設定によって決まります。どのWebDAVクライアントも分割アップロードや再開に対応するとは限りません。80%で中断した転送でも、使った処理が再開に対応しなければ最初からやり直す場合があります。クライアント側では次の点を確認してください。
| クライアント | 実用上の制限や注意点 |
|---|---|
| Windowsのエクスプローラー | 既定で50 MB、レジストリ変更後は~4 GB |
| macOSのFinder | WebClient制限はないが、非常に大きなファイルでは遅延や失敗が起こり得る |
| Cyberduck | サーバー、空き容量、設定による |
| rclone | 並列転送と再試行に対応。再開は処理とサーバーによる |
実用的なのは、フォルダーの閲覧や日常の文書作業にはドライブをマウントし、数ギガバイトの転送にはrcloneを使う組み合わせです。
WebDAVの制約
オフライン利用は保証されない。ローカルコピーがなければ、ネット接続のない機内でファイルを開けるとは限りません。必要なファイルを先にダウンロードするか、対象フォルダーを同期してください。
ローカルディスクを前提とするアプリでは遅延が問題になる。200 MBの動画を開くには、クライアントによってはその200 MBをダウンロードする必要があります。写真ライブラリ、データベース、小さなランダム読み取りを大量に行うソフトは、WebDAV経由ではうまく動かないことがあります。必要に応じてローカルで作業し、変更を戻す手順を共有してください。
Officeのファイルロックには制約がある。WordとExcelはマウント先のファイルを直接開いて保存できますが、ロックの動作はクライアントとサーバーに左右されます。同じ表を同時編集したときに必ず警告されるとは限らず、SMB共有と同じ動作とも限りません。
フォルダー一覧にはサーバーへの要求が必要。10,000個のファイルがあるフォルダーは、開くまでに時間がかかることがあります。サブフォルダーに分ければ見やすくなり、取得が速くなる場合もあります。
削除したファイルはゴミ箱に入る場合がある。Driveでこのポリシーが適用されるファイルは、30日間復元できます。容量を空けるには、ゴミ箱を空にする必要がある場合があります。クライアントが実行する削除方法を確認し、ゴミ箱と復元を参照してください。
WebDAVは共有リンクの代わりではない。許可された認証情報でストレージへアクセスするためのプロトコルです。アカウント外の相手に渡すなら、共有リンクを作成してください。大きなファイルをメール添付している場合は、メールとファイル共有で、メールの上限に応じて約18 MBから生じる問題を説明しています。
クライアントの選び方
| やりたいこと | 選択肢 |
|---|---|
| Macで文書を閲覧して開く | Finder |
| Windowsで文書を閲覧して開く | ネットワークドライブ。レジストリ設定に注意 |
| 大量のデータを移動する、定期処理を実行する | rclone |
| GUIで大きなファイルを転送する | Cyberduck |
| スマートフォンからアーカイブを開く | Androidでは対応するDAVx⁵構成、iOSではDocuments |
| サーバーを毎晩バックアップする | 必要な書き込み権限を持つデバイス用パスワードとrclone |
よくある質問
何かインストールする必要がありますか?
macOS、Windows、多くのLinuxデスクトップ環境にはWebDAVクライアントが含まれています。モバイルでは対応アプリや連携機能が必要です。AndroidのDAVx⁵、iOSのDocumentsなど、構成に応じて選んでください。必要条件と料金も確認しましょう。rcloneとCyberduckは、大きな転送向けの追加の選択肢です。
マウントするとローカル容量を使いますか?
はい。開いたファイルとキャッシュが容量を使うことがあります。フォルダーの閲覧のためにDriveの2 TB全体を256 GBのディスクへダウンロードする必要はありませんが、実行する処理に足りる空き容量は必要です。
なぜ通常のパスワードではなくデバイス用パスワードなのですか?
ほかの端末を切断せずに特定のパソコンを無効にでき、設定ファイルに保存する認証情報の権限も限定できるからです。アクセス先はDriveであり、請求、ドメイン、メールではありません。読み取り専用の権限では変更や削除はできません。
接続中のデバイスを失効させるとどうなりますか?
そのパスワードを使う以降の要求は認証に失敗します。クライアントが再び認証を必要とした時点で接続や転送が中断されますが、すでに許可された要求が直ちに停止するとは限りません。失効によってファイルが削除されることはなく、ほかのデバイスのパスワードにも影響しません。
複数の人が同じフォルダーをマウントできますか?
アクセス権があれば可能です。各自が必要な権限を持つ自分専用のデバイス用パスワードを使ってください。同じアカウントに属しているだけで、すべてのフォルダーを開けるとは考えないでください。同時編集は事前に調整し、上書きを防ぎましょう。詳しくはチームとのフォルダー共有を参照してください。
WebDAVは暗号化されていますか?
ポート443のHTTPS接続なら、転送中のデータをTLSで暗号化します。WebDAV自体は暗号化を必須にしていないため、http://のURLは使わないでください。CyberduckではWebDAV (HTTP/SSL)を選び、WebDAV (HTTP)は避けてください。
バックアップを自動化できますか?
はい。rcloneと必要な権限を持つデバイス用パスワードを使い、認証情報はリポジトリ外で保護して定期実行を設定します。rclone syncには注意してください。元の場所から消えたファイルが、転送先でも削除されることがあります。そのため、同期だけでは履歴を残すバックアップの代わりになりません。パスワードをDriveに限定すると侵入時の影響範囲を狭められますが、許可されたファイルは付与した権限の範囲で危険にさらされます。