メール到達率とDNS

問題になる前にスパム統計を読み解く

著者:Alexey Bulygin
大半の手紙を通し、数通を確認用に取り分ける仕分けトレイ

スパムフィルタリングは、正常に機能している間は誰も気に留めないメール機能です。メールは届き、迷惑メールはほとんど届かず、重要なメールがある日スパムフォルダに入ったり、顧客から返信を受け取っていないと言われたりするまで、すべてが見えないままです。その時点では、傾向を読むのではなく、すでに問題への対処を始めることになります。

スパム統計は、この状況を変えます。ドメインごとに直近三十日間のデータを示し、多くのプロバイダーでは尋ねることすらできない疑問に答えます。自分のドメインで実際に何がフィルタリングされ、フィルターは正しく判断しているのでしょうか。

スパム統計が実際に示すもの

ドメインごとに期間全体の概要と日別の系列が表示されるため、全体の形と変化の両方を確認できます。

指標わかること
受信総数迷惑メールを含め、ドメインに到達したすべてのメール
正常フィルタリングを通過して配信されたメール
検出したスパム迷惑メールと識別されたメール
拒否したスパム振り分けられず、その場で拒否されたメール
検出したウイルス既知のマルウェアを含むメール
スパム率受信メールのうちスパムと検出された割合
ユーザー報告のスパム利用者自身が迷惑メールとしてマークしたメール
解除された誤検知スパムフォルダから救い出された正当なメール
上位のシンボル最も多く発動しているフィルタールール

注目すべきなのは最後の三つであり、ほとんど誰も公開していない指標でもあります。ブロックした迷惑メールの量しか示さないスパム統計はマーケティングです。フィルターが誤った頻度を示す統計は診断に役立ちます。

問題を示す数値

ほとんどの場合、これらの数値は動かず、無視してかまいません。ただし、三つの動きには対応する価値があります。

誤検知の増加。利用者が正当なメールをスパムフォルダから頻繁に解除しているなら、フィルターがそのメールトラフィックに合わせて正しく調整されていません。よくある原因は、利用している取引先やニュースレターに迷惑メールと共通する特徴があることです。これはメールにおいて最も損失の大きい障害であり、同時に最も報告されにくい障害です。見積書を受け取らなかった相手は、苦情を伝えるべきだと知りようがないからです。

一つのドメインで受信量が急増。通常はトラフィックの少ないドメインで突然増加した場合、一般にはアドレスが収集され、リストに登録されたことを意味します。緊急ではありませんが、その後に迷惑メールが増える傾向があります。catch-all アドレスなら、特に大量になる可能性があります。

検出数が横ばいのまま、ユーザー報告のスパムが増加。これは迷惑メールがすり抜け、利用者が手作業で片付けていることを意味します。フィルターは目立つ形ではなく、静かに失敗しています。その代償はエラーとして表れるのではなく、全員の注意力によって負担されています。

ドメイン別であることが重要な理由

アカウント全体で集計したスパム統計は、まさに確認すべき情報を隠してしまいます。

ドメインごとにトラフィックは異なります。会社サイトで公開されている info@ アドレスが受け取るメールの構成は、六人だけが使う社内ドメインとはまったく異なり、平均するとどちらの実態も表さない数値になります。スパム率 40% は、一方では警戒すべきでも、もう一方ではごく普通です。

顧客のドメインを管理している場合、これが役立つ回答と曖昧な返事を分けます。顧客からメールが届かなかった理由を尋ねられたとき、ドメイン別のスパム統計があれば、関係のないプラットフォーム全体の平均値から推測するのではなく、該当期間の顧客ドメインだけを確認できます。

シンボルの読み方

上位シンボルの一覧は、フィルターの判断過程を示します。各シンボルは、認証結果、評判の確認、コンテンツのヒューリスティックなど、発動した一つのルールを表し、回数はその頻度を示します。名前は基盤となるフィルタリングエンジンの Rspamd に由来します。

すべて覚える必要はありません。認証シンボルが大部分を占めていることに気づけば十分です。通常、それはスパムの問題ではなく、送信者側の問題を示すからです。SPF や DMARC アライメントに失敗したメールは、正当なものでも迷惑メールとしてのスコアが上がります。直すべきなのはフィルターではなく、送信ドメインのレコードです。その点は、SPF の設定DMARC の構成に関するガイドで説明しています。

知っておくべき最も一般的な誤検知の原因は、自身の認証が壊れている取引先です。スパム統計では、見覚えのある送信者に対して、コンテンツと無関係なルールが発動する形で表れます。

対応方法

実行できる対応は意図的に少なくしてあります。ほとんどのスパム問題は、設定ではなく学習によって解決するからです。

スパムの報告と誤検知の解除は、どちらもフィルターに学習情報を与えます。二週間継続すれば、どの設定よりも数値を動かします。特定の送信元が問題で、待ちたくない場合は、その送信者をブロックできます。正当ではあるものの不要なメールには、迷惑メールとしてマークするより、別の場所に振り分けるフィルタールールが適切です。マークすると、他の人にとっては必要かもしれない送信者を信用しないようシステムに学習させてしまうからです。サーバー側のルールはメールフィルターの仕組みで説明しており、Pro プランから利用できます。

通常の誤りは、このどれも実行せず、フィルターが悪いと結論づけることです。スパム統計は、直感ではなく情報に基づいて判断するためにあります。

通常のスパム率の形

普遍的な数値はありません。数値を提示するプロバイダーは、あなたのドメインではなく、自社の平均値を説明しています。自分のスパム統計を十分な期間読み、通常の形を理解することで、異常を認識できるようになります。

公開アドレスを持つドメインでは、ウェブサイト、名刺、社用車などに掲載されたアドレスへの受信トラフィックの大半が迷惑メールと分類されることも珍しくありません。半分を超える割合でも、そこでは特別なことではありません。既知の相手同士の社内連絡だけに使うドメインでは、迷惑メールはごく少ないはずです。そのようなドメインに突然スパムが現れたら、軽く受け流さずに確認する価値があります。

すべてのドメインでゼロ付近に保つべき指標は、解除された誤検知です。迷惑メールのすり抜けは煩わしい一方、正当なメールが迷惑メールとして振り分けられると損失が生じ、この二つは対称ではありません。すべてを捕捉するよう調整したフィルターは、少数の迷惑メールを通すフィルターより、必ず高い代償をもたらします。

最も重要なのは変化の方向です。六か月間安定していた割合が動いたなら、何かが起きたことを示しています。スパム統計を使えば、多くの場合、その日付を一日単位で特定できます。

顧客から苦情があった場合の使い方

他人のドメインを管理している場合、この機能の価値が最も表れます。「メールを受け取っていない」という会話には、これがなければ根拠がまったくないからです。

手順は短く、スパム統計だけで完結します。顧客が説明した期間について、そのドメインを確認します。受信量が通常どおりで何も拒否されていなければ、メールはおそらくまったく到達していません。調査対象は自分側ではなく、送信者側へ移ります。スパムとして検出されていたら、その事実を伝え、解除し、シンボルをもとにフィルターがそう判断した理由を説明できます。

これにより、防御的なやり取りが数分で事実に基づく会話へ変わります。また、フィルターが原因だと決めつけ、正常に動いていたものの調整に午後いっぱいを費やすという、反対方向の誤りも防げます。

これを可能にするのがドメイン別のスパム統計です。アカウント全体の平均値は、顧客自身のドメインについて何も伝えず、顧客もそれを理解しています。

拒否と振り分けの違い

二つの指標は似ていますが、意味は大きく異なります。混同すると、誤った結論につながります。

検出したスパムとは、受信した後に迷惑メールと分類されたメールです。メールは存在し、フォルダ内にあり、取り出せます。拒否したスパムとは、SMTP のやり取り中に拒否され、まったく受信されなかったメールです。自分側のどこにも存在せず、取り出す対象自体がないため、解除できません。

拒否されるのは、既知の悪質な送信元、形式が不正なメール、受信することが無謀なほど認証に失敗している送信者など、最も確信度の高い事例です。拒否されたメールは送信側でエラーを発生させるため、巻き込まれた正当な送信者は、メールが届いたと思い込まず、ただちに事実を知ることができます。

誤った拒否を心配する人に伝えるべき要点がここにあります。誤って拒否されたメールは、失敗したことを送信者に知らせます。誤ってフォルダへ振り分けられたメールは、誰にも何も知らせません。だからこそ、注視すべき数字は拒否数ではなく、解除された誤検知数です。

数値からわかることの限界

スパム統計は、自分のドメインへの受信メールだけを説明します。そのため、答えられない疑問が二つあります。

統計がこれらを扱うと思い込み、間違った場所を調べることがよくあるため、どちらも明確にしておく価値があります。

自分の送信メールが他の場所でどう扱われているかはわかりません。送信したメールが他人の受信トレイに入るかどうかは別の問題であり、DMARC レポートとバウンスデータで確認します。詳しくはDMARC レポートの読み方で説明しています。

また、個々のメールについて説明するものでもありません。概要は集計データであり、件数、割合、期間中に最も多く発動したルールを示します。紛失した特定のメールについては、統計ではなく、そのメールのヘッダーに答えがあります。統計からわかるのは、その形のトラフィックがドメインで発生していたかどうかだけです。

変化に気づき、質問されたときの根拠を得るという本来の目的で使えば、すぐに答えを得られます。一通のメールを診断するために使えば、期待外れに終わります。

無理のない確認習慣

毎週これを確認する人はいませんし、その必要もないはずです。

月に一度確認し、目立つブロック数より先に誤検知を見ます。社内用ドメインより先に、顧客トラフィックを扱うドメインを確認します。誤検知がゼロで、ユーザー報告のスパムが横ばいなら、タブを閉じてかまいません。システムが正常に動作しています。

もう一つの確認時期は、メールが届かなかったと誰かが言った瞬間です。送信されなかったと決めつける前に確認してください。スパム統計を見れば、そのトラフィックをドメインが受け取ったかどうかが一分以内にわかり、議論を事実に変えられます。

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