どのWebサイトもメールを送信します。注文確認、パスワードの再設定、問い合わせフォームからの通知、予約のリマインダーなどです。トランザクションメールは、誰も事前に計画しないのに、誰もが頼りにしている仕組みです。多くの場合、サイト制作者が一度設定したきり、その後は見直されません。
やがて顧客に注文確認メールが届かなくなり、実は8か月も迷惑メールに振り分けられていたことが判明します。この記事では、利用するプラットフォームにかかわらず、なぜこの問題が起きるのか、どう構成すれば防げるのかを解説します。
トランザクションメールの障害に気づきにくい理由
多くのプラットフォームでは、プログラミング言語が備えるメール関数を使い、Webサーバーから直接メールを送るのが初期設定です。テストでは自分の受信箱を確認し、自分が使うメールサービスからも信頼されているため、正常に動いているように見えます。
本番環境で失敗する原因は、コードとは無関係です。Webサーバーには送信元としての評価がなく、IPアドレスも同じホスト上のほかの利用者と共有されています。さらに、ドメインが許可していない場所から送っているにもかかわらず、メールは自社ドメインを送信元として名乗ります。受信側がこのパターンをなりすましと判断するのは、多くの場合、本当になりすましだからです。そのため、Googleのメール送信者向けガイドラインでも認証が求められています。
送信側では障害に気づけません。サイトには送信済みと表示され、ログにもエラーはなく、受信先で迷惑メールに振り分けられたことを示す情報もありません。トランザクションメールは不達を把握しにくいため、数か月後に顧客から苦情が届いて初めて発覚することがよくあります。
どのプラットフォームでも問題は同じ
これはWordPressだけの問題ではありません。WordPressが頻繁に原因とされるのは、最も広く利用されているからです。仕組み自体はどのプラットフォームでも変わりません。
WordPressは初期設定でPHPのmail関数を使います。つまり、先ほど挙げた問題を抱えたままサーバーから直接送信します。SMTPプラグインに切り替えるのが一般的な解決策です。
Shopify、Wix、Squarespaceは自社のインフラからトランザクションメールを送信しており、通常は適切に管理されています。ただし、必要な設定を行わない限り、独自ドメインからの送信を正しく認証できるとは限りません。その結果、自社から送ったように見えるメールでも、本当に自社からのものか確認できない場合があります。
Webflow、Ghost、独自開発のアプリケーションはそれぞれ異なりますが、傾向は同じです。初期設定の送信方法が独自ドメインで正しく認証されていることは、ほとんどありません。
どのプラットフォームでも、解決策は共通しています。Webサイトのトランザクションメールを認証済みのSMTP接続に通し、その接続からの送信を許可するDNS設定をドメインに用意します。
必要な3つの対策
必要なのは次の3つです。どれか1つでも欠ければ、メールは引き続き迷惑メールに入る可能性があります。
送信に使うSMTPアカウント。Webサーバーから直接送る代わりに、サイトがメールサーバーで認証を行い、メールの送信を任せます。どのプラットフォームでも、本体の機能またはプラグインを使って設定できます。
送信を許可するDNS設定。送信サーバーを指定したSPFレコードと、検証可能な署名をメールに付けるDKIMが必要です。これらがなければ、SMTPで認証済みでも受信側には未承認の送信に見えます。レコードの設定方法は、SPFとDKIMのガイドで詳しく説明しています。
実在する送信元アドレス。noreply@yourdomain.comを送信元にしながら、実際にはそのメールボックスが存在しない場合、わずかとはいえ確実に評価を下げる要因になります。返信が消えてしまう点も問題です。TrekMailはユーザー単位の課金ではないため、このメールボックスを作成しても追加料金はかかりません。
通常のやり取りと分離する
送信量がある程度増えたら、Webサイトのトランザクションメールには専用の経路を用意することをおすすめします。
自動送信メールと人が書くメールでは、送信の傾向も評価のされ方も異なります。セキュリティ事故の後に500通のパスワード再設定メールが一斉に送られる状況は、通常のやり取りとはまったく違います。両方を同じ経路から送ると、自動送信メールの評価が普段のメールにも影響します。
ドメインごとにSMTPプロファイルを用意すれば、簡単に分離できます。アプリケーションの送信元ドメインを一方の経路に、スタッフが使うドメインをもう一方の経路に割り当てます。これで片方に問題が起きても、もう片方には影響しません。設定方法は、ドメインごとのカスタムSMTPで解説しています。
さらに、自動送信メール専用のサブドメインを使う企業もあります。送信元アドレスが少しすっきりしなくなる代わりに、送信評価を完全に切り離せます。そこまでする価値があるかどうかは、送信量によって決まります。
トランザクションメール配信サービスを選ぶべき場合
適用範囲について率直にお伝えすると、本格的な大量送信では専用のトランザクションメール配信サービスを使うだけの理由があります。
1日に数万通を送る場合、メール単位の配信イベント、バウンスを知らせるWebhook、テンプレート管理、詳細な分析が必要です。専用サービスはまさにそのための製品であり、一般的なメールホスティングでは同じ水準の機能を提供できません。
TrekMailの1日あたりの上限は、一斉配信ではなく通常のやり取りを想定しています。Starterではメールボックスごとに1日1,000通、Agencyでは最大2,500通です。小規模なショップや予約システムのトランザクションメールなら十分に収まりますが、大量送信を行うプラットフォームには向きません。その場合は、カスタムSMTPプロファイルに専用のトランザクションメール配信サービスを接続するのが適切です。メールホスティングと大量送信を分離しつつ、メールホスティング自体を2社に分けずに済みます。
実際に機能しているか確認する
この種の障害には気づきにくいため、正常だと決めつけず、実際に確認する習慣が何より大切です。
テスト注文やパスワードの再設定を行い、本物のメールを発生させます。そして、異なる大手メールサービスのアドレス2件に送信してください。メールヘッダーを開き、SPFとDKIMがpassになっていること、DMARCでアライメントが確認できることを調べます。3つすべてに合格すれば、設定は本当に完了しています。
その後も四半期に一度、またDNSやホスティングに変更があった直後に同じ確認を行いましょう。トランザクションメールは初期設定時よりも、周辺の設定が変わったときに壊れやすいものです。ネームサーバーの移行後に、注文確認メールまで再テストしようと考える人はほとんどいません。
メールは届くものの迷惑メールに入る場合は、ドメインの配信統計とDMARCレポートを確認すると、内容を推測で変更するより早く原因を突き止められます。